傷病手当金について調べていると、「もらわないほうがいい」「申請すると何か不利になる」といった情報を見かけて、不安になる方もいるでしょう。
結論からいうと、休職によって給与が出ない、または大きく減るのであれば、傷病手当金を「もらわないほうがいい」とは一概にいえません。
たとえば標準報酬月額が30万円の人なら、傷病手当金は単純計算で1日約6,667円、30日なら約20万円が目安です。何となく不安だから申請しないとなると、この生活保障を受け取れないことになります。
ただし、休職中も給与が出る場合や、有給休暇を使う場合などは話が変わります。この記事では、「自分の場合は申請したほうがいい?」を判断できるよう、傷病手当金の注意点を具体例とともに整理します。
結論|傷病手当金は「もらうと損」な制度ではない
傷病手当金は、業務外の病気やケガで仕事ができず、会社から十分な給与を受けられないときの生活を支えるための健康保険給付です。
基本的には、次の4つの条件を満たす場合に支給対象となります。
- 業務外の病気やケガで療養している
- 仕事に就くことができない
- 連続する3日間を含め4日以上仕事を休んでいる
- 休んだ期間について給与を十分に受けていない
支給額は原則として、支給開始日前12か月間の標準報酬月額の平均を30で割り、その3分の2です。支給期間は、支給開始日から通算1年6か月となっています。
参照:全国健康保険協会「傷病手当金」
https://www.kyoukaikenpo.or.jp/benefit/injury_and_sickness_allowance/
まず見るべきは「休んでいる間に給与がいくら出るか」
傷病手当金を申請するか迷ったら、最初に確認したいのは休職中の給与です。
「傷病手当金をもらうと給与が3分の2になる」と考えがちですが、順番は逆です。病気やケガで働けず給与が出ない、または少なくなったときに、その生活を補うのが傷病手当金です。
| 休職中の状況 | 考え方 |
|---|---|
| 給与が出ない | 傷病手当金の申請を検討 |
| 給与が一部出る | 傷病手当金との差額が支給される場合あり |
| 給与が傷病手当金以上出る | その期間は原則として傷病手当金なし |
| 有給で通常の給与が出る | その日は原則として傷病手当金なし |
月給30万円の人ならどのくらい?
標準報酬月額の平均が30万円だったとして、単純化して計算してみます。
30万円 ÷ 30日 × 2/3 = 約6,667円/日
30日分なら約20万円です。
たとえば会社から休職中に10万円の給与が支払われた場合、一定の条件を満たせば、傷病手当金との差額が支給されます。
つまり、「申請すると損か」ではなく、給与がいくら出て、傷病手当金ならいくらになるのかを比べるのが判断の近道です。
※実際の支給額は標準報酬月額や支給対象日数などによって異なります。
もらう前に知っておきたい3つの現実
傷病手当金に大きなペナルティがあるわけではありませんが、「思っていたのと違った」とならないよう、次の3点は知っておきたいところです。
- 通常の給与より収入は少なくなりやすい
- 会社と医師に申請書を書いてもらう必要がある
- 長期休職では複数回申請することもある
給与の満額補償ではない
傷病手当金は原則約3分の2なので、普段の給与と同じ金額が入ってくるわけではありません。
たとえば普段の手取りを基準に家賃やローンを組んでいる場合、休職後に家計が厳しくなることもあります。休職が長引きそうなら、固定費まで含めて一度確認しておくと安心です。
申請は本人だけでは完結しない
傷病手当金支給申請書には、本人が書く欄のほか、会社が勤務状況や給与を証明する欄と、医師などが療養状況について記入する欄があります。
そのため、申請には勤務先と医療機関の協力が必要です。
長期休職では1回の申請で終わらないことも
協会けんぽでは、長期間休む場合、1か月単位で給与の締切日ごとに申請することをすすめています。
たとえば3か月休職するなら、月ごとに申請するケースもあります。「最初に1枚出せば1年6か月ずっと振り込まれる」という仕組みではありません。
参照:全国健康保険協会「傷病手当金について」
https://www.kyoukaikenpo.or.jp/g6/cat620/r307
有給を全部使うのが正解とは限らない
有給休暇が残っていると、「先に全部使ってから傷病手当金を申請したほうがいい?」と迷うところです。
有給を使って通常どおり給与が支払われる日は、原則として傷病手当金は支給されません。金額だけを比べれば、給与が満額出る有給のほうが有利なケースは多いでしょう。
ただし、有給を最初に全部使い切るのが必ず正解とも限りません。
たとえば有給が10日残っていて、2か月程度休職する可能性があるとします。最初の10日ですべて使ってしまうと、復職後の通院や体調不良で休みたいときに有給が残っていません。
一方で、当面の収入をなるべく減らしたくないなら有給を先に使う考え方もあります。
このあたりは「どちらが得か」だけではなく、休職期間の見込み・残りの有給日数・復職後の働き方まで考えて決めるとよいでしょう。
「申請しない」という選択にも期限がある
傷病手当金は、条件を満たしても自動的に振り込まれるものではありません。申請しなければ受け取らないままになります。
「今は必要ないから、必要になったら後で申請すればいい」と考えることもできますが、申請期限には注意してください。
傷病手当金を受ける権利は、労務不能だった日ごとに、その翌日から2年で時効になります。
たとえば2026年9月1日の休業分については、その日の分をいつまでも遡って請求できるわけではありません。
「申請しない」と決めること自体はできますが、迷っているならそのまま何年も放置しないほうがよいでしょう。
参照:全国健康保険協会「健康保険傷病手当金支給申請書」
https://www.kyoukaikenpo.or.jp/g2/cat230/r124
退職を考えているなら、辞める前に確認したい
体調が戻らず、そのまま退職を考える人もいるでしょう。この場合は、辞めてから調べるより退職前に傷病手当金の条件を確認しておくことをおすすめします。
一定の条件を満たせば、会社を退職して健康保険の資格を喪失したあとも、傷病手当金を継続して受け取れる場合があります。
- 資格喪失日の前日までに、健康保険の被保険者期間が継続して1年以上ある
- 資格喪失日の前日に傷病手当金を受けている、または受けられる状態にある
特に退職日の働き方などによって継続給付に影響する場合があるため、「どうせ辞めるから申請しなくていい」と自己判断せず、加入している健康保険へ事前に確認しておきましょう。
参照:全国健康保険協会「傷病手当金」資格喪失後の継続給付について
https://www.kyoukaikenpo.or.jp/benefit/injury_and_sickness_allowance/
「会社に迷惑?」「転職で不利?」よくある心配を整理
最後に、傷病手当金を申請するか迷うときによくある不安をまとめます。
会社に知られず申請できる?
通常の申請では、会社が勤務状況や給与の支払い状況を証明するため、勤務先に一切知られず申請する制度ではありません。
とはいえ、傷病手当金は会社からお金をもらう制度ではなく、加入している健康保険から支給される給付です。
傷病手当金をもらうと転職先にばれる?
傷病手当金を受け取ったことが、それだけで転職先へ自動的に通知される仕組みではありません。
ただし、転職時に現在の健康状態や就業上必要な配慮について確認される場合などは別の話です。傷病手当金の受給歴と、採用時の健康状態の申告は分けて考えましょう。
傷病手当金に所得税はかかる?
健康保険から受け取る傷病手当金は非課税です。受給した傷病手当金そのものに所得税がかかることを理由に、申請を避ける必要はありません。
参照:国税庁「No.2011 課税される所得と非課税所得」
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2011.htm
こんな場合は、まず加入先に確認したほうがいい
傷病手当金は基本的なルールこそ決まっていますが、給与や会社独自の制度が絡むと「自分の場合はいくら?」がわかりにくくなることがあります。
- 休職中も給与が一部支給される
- 会社独自の休職手当がある
- 有給と傷病手当金をどう使うか迷っている
- 近いうちに退職する予定がある
- すでに長期間申請せず休職している
こうしたケースでは、会社の担当者だけでなく、加入している健康保険へ「この条件なら傷病手当金はいくらになるか」まで確認すると判断しやすくなります。
傷病手当金のよくある質問
まとめ|迷ったら「もらうか」より「いくら出るか」で考える
傷病手当金は、受け取ったことで何か罰則が生じるような制度ではありません。
給与が出ない、または大きく減るのであれば、まず自分がいくら受け取れるのかを確認する。これが一番わかりやすい判断方法です。
一方、給与が十分に出る、有給を使う、近いうちに退職するといった場合は、傷病手当金との関係を確認してから決めたほうがよいでしょう。
「会社に悪く思われそう」「転職で不利になりそう」といった漠然とした不安だけで申請を諦めるのではなく、給与・休職期間・今後の働き方を見ながら、自分に必要な制度かを判断してみてください。


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