家族信託は、認知症による資産凍結を守るための法的な制度です。必要となる信託契約書作成は司法書士に依頼しておこなうのが一般的。家族構成や信託財産の種類など、相談者の希望に応じて細かな設計をしなければ後々のトラブルを招きかねません。
しかし、どの司法書士事務所に相談すべきか判断に迷うでしょう。家族信託は設計をおこなう司法書士によって大きく差が出る業務といわれます。
この記事では、家族信託サポートをおこなうサービスや司法書士事務所を選ぶ際のポイントを解説。また、東京で相談できるおすすめのサービスや司法書士事務所も紹介するので、ぜひ参考にしてみてください。
家族信託サポートサービスや司法書士を選ぶときのポイント
家族信託サポートサービスや司法書士事務所を選ぶときのポイントは以下のとおり。
- 家族信託サービスと相続を得意とする司法書士事務所のどちらかを選ぶ
- 家族信託サポートの実績が十分にあるか
- 費用はどれくらいかかるのか明瞭であること
- 家族信託契約後のサポートの有無
家族信託サービスと相続を得意とする司法書士事務所のどちらか
「おやとこ」や「ファミトラ」などの家族信託サポートサービスも個人司法書士が運営する司法書士事務所も、どちらも家族信託のサポートが可能です。
おすすめは家族信託サポートサービス。家族信託を専門とし、家族信託コンサルタントや司法書士、各専門家が在籍しています。また、独自の専門家ネットワークがあり、税務から家族間紛争など合わせて相談できる場合が多いです。
個人の司法書士事務所に依頼するときは、家族信託や相続を主体に業務をおこなう司法書士に相談することで選択ミスを防ぎやすくなります。
特に「家族信託」を前面に出していないような司法書士事務所は経験が少ないと予想できるため、複雑で多要素を盛り込むべき信託契約書の作成を依頼するには心もとないです。
家族信託サポートの実績が十分にあるか
家族信託は他の業務に比べて結果に差が出やすい特徴があるため、絶対的に実績や信頼性のある司法書士に依頼するべきです。
司法書士だからといってすべての業務に精通しているわけではありません。例えば内科医でも、消化器内科、循環器内科、神経内科などに専門分野が分かれているように、司法書士にも専門分野があります。
家族信託に慣れていない司法書士に依頼すると、「相続の際に家族観紛争が起こる」「家族信託は本来必要がなかった」などの事態が起こる可能性があり注意が必要。サイト内で家族信託サポートの実績が表記されているかどうかは、司法書士を選ぶ上での大きな判断ポイントとなります。
家族信託サポートをおこなう「おやとこ」や「ファミトラ」では、家族信託専門かつ経験豊富な司法書士が在籍しているので、個人司法書士事務所を探すよりも手軽です。
費用はどれくらいかかるのか明瞭であること
費用が明瞭であることは司法書士選びで非常にたいせつ。司法書士に家族信託を依頼する費用の相場は30万円~100万円程度で、それよりも価格設定が高すぎる場合は注意が必要です。
司法書士に家族信託を依頼した場合の費用は、大きく分けて以下の3種類があります。
- 契約にかかる費用:司法書士に支払う報酬や公正証書の作成費・交付手数料
- 登記にかかる費用:不動産を信託した場合にかかる費用
- 契約後にかかる費用:受益者代理人や信託監督人への報酬、契約書の変更等
契約時に、司法書士へ支払う報酬は信託する財産評価額の1%程度が一般的です。その際、公正証書を作成する場合は3万円~10万円程度かかります。
不動産を信託する場合には、信託した旨を登記簿に登記する際に5万円~10万円程度の登記代行手数料が発生します。さらに、法律で定められている信託の目的などを記した信託目録の添付をおこなう必要があり、都度1,000円程度の費用が追加でかかります。
具体的な公正証書作成費用
信託財産の金額
100万円まで:5000円
200万円まで:7000円
500万円まで:11000円
1000万円まで:17000円
3000万円まで:23000円
5000万円まで:29000円
1億円まで:43000円
3億円まで:5000万円ごとに13000円加算
10億円まで:5000万円ごとに11000円加算
10億円越:5000万円ごとに8000円加算
平成五年政令第二百二十四号公証人手数料令」 参考:e-Gov法令検索「
また、信託登記をすると登録免許税が課税され、固定資産税評価額に対して0.3%~0.4%(令和3年3月31日まで/令和3年4月1日からは0.4%)の支払いが必要になります。
契約後にかかる費用としては、受益者代理人や信託監督人への報酬が必要に応じて発生します。受益者代理人も信託監督人も、元の受益者の判断能力が低下していたり、意思決定が難しい場合に設置する当事者です。
また、親族関係や財産状況の変動がある場合には信託契約の内容を変更する必要性がでてきます。信託契約書の変更には10万円程度の費用が発生します。
シミュレーション
実際にどれくらいの費用がかかるのか、シミュレーションをしてみましょう。
信託する財産
【合計3,000万円の信託財産】
<内訳>
自宅(固定資産税評価額)
→1,500万円の土地/500万円の建物
預金
→1,000万円
※受益者代理人や信託監督人なし
上記を前提とすると、おおよその費用は以下のとおりになります。
家族信託にかかる費用
契約にかかる費用:約30万円
登記にかかる費用:約17万円
契約後にかかる費用:基本ゼロ(信託内容を変更する場合は都度約10万円)
シミュレーションのとおり、合計3,000万円分の信託財産であれば、45万円~60万円が相場でしょう。
※家族信託を依頼する司法書士やサービスによって変動します。
家族信託契約後のサポートの有無
家族信託契約は契約して終了ではありません。財務管理や契約内容の変更など、専門家の細かなサポートは必須です。
- いつでも気軽な相談が可能かどうか
- 月々なのか年間契約なのか
- 財産管理アプリの提供があるかどうか
特に信託契約後の義務となっている財産管理は毎年1回、帳簿の作成・出納記録の親への報告・書類作成・税務署への申告が必須となっており大きな負担になります。その際は、財産管理専用のアプリがあると非常に楽です。
できるだけ公式サイトにアフターサポートの料金やサポート内容が記載されているサービスを選びましょう。
また、アフターサポートを希望する場合、司法書士事務所との関係は数年単位の長い期間の付き合いとなります。そのため、はじめの相談時に「信頼できなそう」「話しにくい」など懸念点がある場合は別の司法書士に相談する方が後々のトラブル回避にもつながります。
公式サイトに「アフターサポート」について明記されていない場合でも受けられる場合がほとんどですので、無料相談の際に聞いてみると安心です。
東京の家族信託に強いサービス・司法書士9選
東京で受けられる家族信託サポートサービスや、都内にある家族信託に強い司法書士事務所10選を紹介。実績や料金の明瞭さや高すぎないかなどを基準とし、おすすめ順に並べています。
「おやとこ」トリニティ・テクノロジー株式会社
- 家族信託の契約件数業界トップ
- 大手銀行や保険会社と提携していて安心
- アフターサポートで使える財産管理アプリが便利
「おやとこ」は2016年から家族信託サポートサービスを開始。司法書士が設立したトリニティ・テクノロジー株式会社が提供しています。相談件数は全体で年間数千件と業界トップの実績です。
また、地方になればなるほど「家族信託」の認知度が低く、資産凍結リスクも高くなるもの。おやとこは全国の金融機関や保険会社など、地域に根付いた企業と連携しており、地方の顧客を多く抱えているのも特徴です。
おやとこでは、家族信託の通常業務に加え、家族への説明にも同席してくれたり、財産管理が楽になるおやとこアプリも利用可能なのが最大のメリットです。家族信託の契約をおこなう上でたいへんな点をトータル的にサポートしてくれます。
実績 | 累計500件以上/年間数千件の相談 |
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料金 | 最低料金:55,000円~ ※信託財産の1.1% |
信託後のサポート | 月々2,728円~ ※専門家に相談可能 ※おやとこアプリの利用 |
相談方法 | 無料/メール・電話 |
運営 | トリニティ・テクノロジー株式会社 |
「ファミトラ」株式会社ファミトラ
- 多くの大手企業とパートナーシップを組んでいる
- 契約スピードよりも契約内容の質を重視する
- ファミトラが信託監督人となる
「家族信託」の英語表記である「ファミリートラスト」から名付けられたファミトラは、認知度の低い家族信託を広めるため「家族信託を、あたりまえに。」というビジョンのもと、2019年にサービスを開始しました。
ファミトラ社内の司法書士やコンサルタント以外にも、家族信託に精通した全国の司法書士・弁護士とのネットワークを利用して相談者のサポートをおこなっているため、スムーズなやり取りが可能となってます。
ただし、信託監督人が不要という方はファミトラが向かない旨が書かれているため注意が必要です。家族との信頼関係がどうなのか、という点をよく考えて選択してみましょう。
・信託監督人は法律では必須ではありません。しかし監督人がいなければ、信託が履行されるかどうかは家族の信頼次第になってしまいます。当社は、信託開始後の不安を解消し、信託が契約内容どおりに運営されるために信託監督人は必須だと考えます。
引用元:ファミトラ
実績 | 相談実績2万件以上 |
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料金 | 最低料金:55,000円~ ※信託財産の0.88% |
信託後のサポート | 月々1,078円~ 信託管理人として支援等 |
相談方法 | 無料/メール・電話 |
運営 | 株式会社ファミトラ |
「東京都相続手続き相談室」清澤司法書士事務所
- サポート内容が充実している
- 清澤司法書士は宅地建物取引業の免許持ち
- 司法書士歴18年のベテランが代表
清澤司法書士事務所が運営する「東京都相続手続き相談室」は、相続と遺言にまつわる法的手続きが主体です。
代表の清澤司法書士は司法書士に加えて宅地建物取引業の免許も持っているため、不動産売買もおこなえるという珍しい司法書士事務所です。そのため、認知症を患った際にもスムーズな不動産売却ができ、売却益を介護や入所費用に当てられます。
公式サイト内では相談事例も紹介されています。興味のある方は一度チェックしてみてください。
実績 | 100件以上 |
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料金 | 最低料金:30万円~ ※信託財産の1% ※信託契約書作成費用15万円~ |
信託後のサポート | あり ※具体的な内容の記載なし |
相談 | 無料/メール・電話 |
運営 | 清澤司法書士事務所 |
「家族信託サポート」アンドワン
- 代表は家族信託セミナー経験もある経験豊富な司法書士
- 家族信託契約に関して10年で実績100件以上
- 贈与税や相続税に強い相続税専門税理士も在籍
アンドワンは2010年に代表司法書士が立ち上げ、2021年に司法書士法人となったグループです。代表は、2012年からセミナーを通した普及活動をしてきており、家族信託に対する知識が豊富。約10年で100件以上の契約実績と、10件以上の高齢者逝去後のサポートの実績を持ちます。
また、アンドワンでは家族信託だけでなく、お独り様終活サポートや遺言関連のサポートもおこなっており、高齢者の強い味方となってます。
実績 | 10年/100件以上 |
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料金 | 最低料金:550,000円~ |
信託後のサポート | 年間 44,000円~ 必要な報告書の作成や財産管理のアドバイス・監督など |
相談 | 無料/メール・電話 |
運営 | アンド・ワン司法書士法人 アンド・ワン行政書士法人 |
司法書士法人クラフトライフ
- 比較的低価格で依頼ができる
- 家族信託以外にも知識が豊富
- 気軽に話せる専門家で親しみやすい
クラフトライフは世田谷区用賀にある司法書士法人です。家族信託や遺産相続の相談から、賃貸関連、会社関連の相談まで幅広くおこなっています。
「気軽に話せる専門家であり続ける」ことを理念のひとつに掲げており、親しみやすさから信頼関係を築く大切さをサイト内で語っています。
比較的依頼料も安く、世田谷区周辺にお住まいであれば一度相談してみることをおすすめします。
実績 | 記載なし Googleの口コミ15件星4.4/5 ※2024年6月時点 |
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料金 | 最低料金:84,000円~ ※信託財産額の0.054% |
信託後のサポート | あり 内容は未記載 |
相談 | 無料/メール・電話 |
運営 | 司法書士法人クラフトライフ |
司法書士法人PEAKS TOKYO OFFICE
- 専門家のネットワークが強み
- 即日・翌営業日に相談可能
- 料金体系がシンプルでわかりやすい
司法書士法人PEAKS TOKYO OFFICE(ピークス)は、東京都港区に事務所を構える司法書士事務所です。
ピークスは年間500件以上の相談実績。司法書士は5人体制で、資産凍結を防ぎ確実に引き継ぐための顧客に寄り添ったサポートをしてくれます。公式サイトには料金もわかりやすく記載されているので安心です。
ただし、お住まいが東京都内、神奈川県内、埼玉県内、千葉県内以外だと、別途交通費や日当がかかる場合があるため注意が必要です。
実績 | 年間500件以上 |
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料金 | 最低料金:385,000円~ ※信託財産額の1.2% |
信託後のサポート | 特に記載なし |
相談 | 無料/メール・電話・来店 |
運営 | 司法書士法人PEAKS TOKYO OFFICE |
「相続遺言世田谷相談所」経堂司法書士事務所
- 世田谷でトップクラスの相談実績を持つ事務所
- 相続関連を専門とし、家族信託にも精通している
- 料金体系は公式サイトに記載されており明瞭
「相続遺言世田谷相談所」は、経堂司法書士事務所が運営している相続や遺言専門の司法書士事務所です。世田谷で30年以上も事務所を構え、合計約3,000件の相談実績を持ちます。
相続関連を専門とし、家族信託にも精通しています。料金体系がわかりやすくサイト内に記載されている点は安心ポイントです。
実績 | 約3,000件 ※家族信託以外も含む |
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料金 | 最低価格:33万円 ※信託財産額の1.1% ※信託契約書作成費用16万5千円 |
信託後のサポート | あり ※具体的な内容は未記載 |
相談 | 無料/メール・電話・来店 |
運営 | 経堂司法書士事務所 |
司法書士法人TOT
- 都内を中心に千葉・神奈川・埼玉県からの相談も可
- 初回相談無料、メールでの相談も可能
司法書士法人TOTは、中央区、世田谷区、杉並区、品川区を中心に相談を受けている司法書士事務所です。相談可能な内容は、家族信託をはじめ、過払い金に関すること、消費者契約や自己破産に関することなど多岐に渡ります。
実績 | 記載なし |
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料金 | 最低料金:記載なし |
信託後のサポート | 記載なし |
相談 | 無料/メール・電話・来店 |
運営 | 司法書士法人TOT |
「家族信託組成サポート」東急リバブル
- 大手の会社が提供しているから安心
- 司法書士・弁護士・税理士等が適切な対応をしてくれる
東急リバブルは大手不動産企業。顧客が不動産売却ができなくなるのを防ぐためにも、家族信託の認知を広める事業をおこなっています。
「家族信託組成サポート」サービスは、東急保険コンサルティングの協力のもとおこなわれています。東急保険コンサルティングは専門家ネットワークも充実しており、ワンストップでスムーズな信託契約が可能です。
実績 | 未記載 |
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料金 | 最低料金:33万円~ |
信託後のサポート | あり ※定期的なアフターサポート |
相談 | 無料/メール・電話 |
運営 | 東急リバブル株式会社 |
家族信託に関するよくある質問
家族信託のメリットは何ですか?
家族信託のメリットには、相続手続きの簡素化、認知症などによる財産管理の困難を防ぐこと、相続争いの防止、財産の効果的な運用などがあります。
家族信託のデメリットは何ですか?
デメリットとしては、信託契約の作成に費用がかかること、信託財産の管理責任が信託受託者に重くのしかかること、契約内容に不備があるとトラブルになる可能性があることが挙げられます。
家族信託をおこなうにはどうすればよいですか?
家族信託をおこなうには、まず信託契約を作成し、公正証書にすることが一般的です。専門家(弁護士や司法書士)に相談し、契約内容を詳細に決めることが重要です。
家族信託の契約内容は変更できますか?
家族信託の契約内容は、信託契約に基づいて変更可能です。ただし、契約内容の変更には受益者の同意が必要となる場合があります。変更手続きは信託契約書に従い勧められます。また、司法書士に依頼する場合に10万円程度の費用が必要になります。
家族信託の終了条件は何ですか?
家族信託の終了条件は、信託契約書に定められた期間の満了、受益者の死亡、信託目的の達成などです。信託契約書には終了条件を明確に記載することが望ましいです。
家族信託の受益者はどのように指定しますか?
受益者は信託契約書に明記されます。受益者は信託財産の利益を受け取る人であり、通常は信託設定者やその家族、親族が指定されます。受益者の変更や追加も信託契約書に基づいて行われます。
家族信託にはどのような財産が含まれますか?
家族信託には、現金、不動産、有価証券、保険金、その他の財産が含まれます。信託する財産の種類や内容については、契約書に明記する必要があります。
家族信託と遺言の違いは何ですか?
遺言は死亡後に財産をどのように分配するかを指示するもので、家族信託は生前から財産の管理や運用を第三者に任せる仕組みです。家族信託は生前から効力を発揮しますが、遺言は死亡後に効力を持ちます。
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